高分子と相溶性

高分子と相溶性

高分子とその他分子の混合

  • 他の高分子と混合(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド)
  • 溶媒に溶かす(高分子溶液)
  • 粒子を混ぜる(コンポジット)
  • 添加剤を混ぜる、etc.

のように、一般的に販売されている高分子は100%純度のものはほとんどないでしょう。
高分子は何かしらの分子と混合しています。そのため、相溶性と相分離は産業的に非常に重要です。
これらの混合は、様々な物性・機能の付与、高性能化のために行われています。
しかし、低分子と比べて、高分子は他の材料と混ざりにくいというのが一般的です。

相溶性を確かめる中で、熱力学の考え方が基礎となります。

体積一定

Helmholtzの自由エネルギーの変化

\Delta F_{mix} = \Delta U_{mix} - T \Delta S_{mix}

圧力一定

Gibbsの自由エネルギーの変化

\Delta G_{mix} = \Delta H_{mix} - T \Delta S_{mix}

\Delta F, \Delta G < 0のときに、変化後安定であることを示している。

実際に高分子の混合を見ていきましょう。初期の高分子溶液Aに溶液Bを混合したときの自由エネルギーは

\\ \Delta G_{mix} = G -(G_{A}+G_{B})=H-(H_{A}+H_{B})-T\left \{ S-(S_{A}+S_{B}) \right \}\\ =\Delta H_{mix}-T\Delta S_{mix}

ΔHmix:混合のエンタルピー変化 =混合前後でのエンタルピー の変化
ΔSmix:混合のエントロピー変化 =混合前後でのエントロピー の変化

ΔGmix<0:混ざる
ΔGmix>0:混ざらない

高分子性を考慮した、混合に関する理論:Flory-Huggins理論を用います。

Flory-Huggins理論

格子モデル(分子は一つの格子に収まり、格子サイズは同じ)

平均場近似…至るところで同質の状態が実現と仮定

混合による体積変化を無視…この時、\Delta H_{mix}=\Delta U_{mix} ,(H=U+PV)
そのため、ΔGmix=ΔFmix

(格子あたり)
成分A、Bにそれぞれ働く相互作用エネルギー:uAA、uBB (<0)

成分AB間に働く相互作用エネルギー:uAB (<0)

混合前のエネルギー

U_{0}=u_{AA}\phi_{A}+u_{BB}\phi_{B}, (\phi_{B}=1-\phi_{A})

混合後のエネルギー

U=\left (u_{AA}\phi_{A}+u_{AB}\phi_{B} \right )\phi_{A}+\left (u_{BB}\phi_{B}+u_{AB}\phi_{A} \right )\phi_{B}

「系全体の」混合のエネルギー変化

\Delta U_{mix} = \frac{zn_{l}}{2}(U-U_{0})=\frac{zn_{l}}{2}\phi_{A}(1-\phi_{A})(2u_{AB}-u_{AA}-u_{BB})

\\ \Delta U_{mix}=\frac{zn_{l}}{2} \phi_{A} \left (1-\phi_{A} \right ) \left ( 2u_{AB}-u_{AA}-u_{BB} \right )\\ =kT\chi \phi_{A}\left ( 1-\phi_{A} \right )

ここで、\chi =\frac{zn_{l}}{2} \frac{2u_{AB}-u_{AA}-u_{BB}}{kT}

これをFlory interaction parameterといいます。このχの符号で、ΔUmixの符号は正にも負にもなります。
AA間、BB間の相互作用エネルギー(uAA, uBB)と、 AB間の相互作用エネルギー×2(2uAB)の兼ね合いとなります。

「系全体の」混合のエントロピー変化

\\ \Delta S_{mix} = -k\left [ \frac{\phi_{A}}{N_{A}} \ln \phi_{A}+\frac{\phi_{B}}{N_{B}} \ln \phi_{B} \right ]\\ =-k\left [ \frac{\phi_{A}}{N_{A}} \ln \phi_{A}+\frac{1-\phi_{A}}{N_{B}} \ln \left (1-\phi_{A} \right )\right ]

まず、ΔSmixの符号は常に正
ΔSmix > 0

\frac{1}{N}の項は、ΔSmixを大きく減少させることから、重要な項であります。

以上より、Flory-Huggins理論において、ΔGmixは、

\Delrta G_{mix} = \Delta F_{mix} = \Delta U_{mix}-T \Delta S

=kT \chi \phi_{A} \left ( 1- \phi_{A} \right )+ kT \left [ \frac{ \phi_{A} }{ N_{A} } \ln \phi_{A}+\frac{ 1-\phi_{A} }{N_{B}} \ln \left (1-\phi_{A} \right )\right ]

  • ΔSmixは、系を混合させる方向で働くが、寄与は小さい
  • そのため、χが支配的に寄与する

溶解度パラメータ\delta_{A}\equiv \sqrt{\frac{\Delta E_{A}}{v_{A}}}を用いると

-\frac{zu_{ii}}{2}=v_{0}\delta _{i}^{2}, \left ( i=A,B \right )

-\frac{zu_{AB}}{2}=v_{0}\delta _{A}\delta _{B}

これらを利用すると、

\chi =\frac{v_{0}}{kT}\left ( \delta_{A}-\delta_{B} \right )^{2}

となります。

この時、χ>0、となり、χは混合を妨げる向きに働きます。
ΔFmix<0実現するには、 δAとδB の値の差を小さくする必要があります。

\chi \cong A+\frac{B}{T}

Aがエントロピー項、Bがエンタルピー項を表しています。

ここで注意が必要なのは、Flory-Huggins理論で混合の体積変化や濃度変化(エントロピー項)、水素結合(エンタルピー項)などの影響を無視していることです。
実際のχパラメータは、相互作用、混合の体積変化、濃度変化 など、多くの影響を受けます。

このBの値によって、相溶性に違いが現れます。
B > 0
高温で相溶、低温で非相溶
上限臨界共溶温度 (Upper Critical Solution Temperature :UCST)

B < 0
低温で相溶、高温で非相溶
下限臨界共溶温度 (Lower Critical Solution Temperature :LCST)

相分離曲線の導出(UCST系)

一成分系では、 安定な系が実現する条件は、ΔFmix < 0、かつ\frac{\partial \Delta F_{mix}}{\partial \phi}=0
しかし、二成分系では、(T0 > UCST > T1 > T2)

\frac{\partial \Delta F_{mix}}{\partial \phi_{1}}=\frac{\partial \Delta F_{mix}}{\partial \phi_{2}}
この時、 ”系全体”の 自由エネルギーが最小

各温度における二相の濃度をφ-T図で表示したものが 相分離曲線(バイノーダル or 核生成曲線)といいます。

Flory-Huggins理論 から求めた相図の変化

① 分子量が増加すると、 相分離線が上昇
② 重合度の差が大きくなると、 相分離曲線は非対称

定性的な傾向は示すが、定量的には一致しない

Flory-Huggins理論の代表的な問題点

(1)平均場近似 …至るところで同質の状態が実現と仮定

ex. 格子あたりの混合後のエネルギー U = (uAAφA +uABφBA + (uBBφB +uABφAB

一成分の濃度が低いと、濃度の粗密が顕著になり、 平均場近似は成立しない
一成分の濃度の低いと、Flory-Huggins理論のズレが大きくなる

(2)実際にはχパラメータは濃度依存性を含むが、導出 (平均場近似)から分かるように濃度依存性は考慮されない。

(3)混合による体積変化を考慮していない

等々、多くの問題を含んでいます。

相分離

一つの相が異なる複数の相に分離する動的な現象 (ex. 相溶している系が、二つの異なる相に分離する現象)
相分離とは、混ざった状態から、 混ざらない状態へ 移行する過程です。

ポリマーアロイやポリマーブレンドにおける相分離の特徴

高分子の運動性は非常に低いため、相分離に十分な時間を要する。
→ そのため、相分離現象そのものを研究するために高分子が対象とされる。

高い粘度や、高いガラス転移温度のために、有限の時間内に おいて、相分離構造が完全に分離した構造に至ることは稀です。

水と油のような完全な分離はあまりみられません。
*高分子溶液では完全に分離するものが多いです。

高分子における代表的な相分離構造

核生成型(球状ドメイン、海島構造)

スピノーダル分解型 (網目構造、共連結構造)

通常の相構造はμmの大きさ ・成分が同じブレンドでも、組成が異なると相構造が異なる。
→相分離にどのような違いがあるか?

核生成型

核生成型(球状ドメイン) → 核形成領域(準安定領域)での相分離により自発的に形成します。
核内の高分子濃度は一定のまま、 核は増大(粗大化)します。

*核生成領域(準安定領域)では、核形成時の界面が律速となります。

核形成による自由エネルギーの変化 ΔGʼ = 4πR3/3•ΔG + 4πR2•γ

ある程度の大きさの核が形成 すると、核が自発的に成長します。

スピノーダル分解型

スピノーダル分解型(網目構造、共連結構造) → スピノーダル領域での相分離により自発的に形成します。

  • 濃度ゆらぎは連続的に増加
  • 負の拡散
  • 最終的な構造は核生成と類似

Qm ~ D-1(D:周期構造の大きさ)

D ~ t1/3
蒸発・凝集機構 (分子の拡散が支配的)
(固体ではLifshitz-Slyozov則)
(流体ではBinder-Stauffer則)

衝突・合体

D ~ t1
流体菅の不安定性 による粗大化

値はクエンチ温度、分子量、 濃度などにしばしば依存します。

 

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