高分子とコンフォメーション

高分子とコンフォメーション

Conformation(立体配座)とは?

同一のconfigurationにおいて、各結合部の回転によって 得られる立体構造です。
→一本の高分子鎖がとる形状

回転異性体

分子内部の回転を考えます(主鎖はC-C結合なので、一重結合を軸に回転)。

各状態を取る可能性(φ)は、

\phi \propto exp\left ( \frac{-E}{RT} \right )

E:t(ターシャリー)状態とのエネルギー差

t:φ = 1(tが基準なのでE = 0)
g+(= g-):φ = exp(-Eg/RT)
c:φ = 0(Ecは非常に大きい)

tの状態を取る確率=\frac{1}{1+2 \exp \left ( \frac{-E_{g}}{RT} \right )}

gの状態(g+とg-)を取る確率=\frac{2 \exp \left ( \frac{-E_{g}}{RT} \right )}{1+2 \exp \left ( \frac{-E_{g}}{RT} \right )}

固体だと、分子の動きは 固定されます。

  • 結晶化の条件や様々な 環境で、異なる回転異性体を 実現する。
  • 結晶の構造は安定性が高いので、 一度できた構造は常温に戻しても 多くの場合安定に存在

溶液 or 溶融状態だと、 分子の動きは固定されない

  • それぞれの状態を 各々の確率で実現する (いろんな状態が時々刻々出現)
  • 重合度1000の分子鎖では 31000もの場合の数がある。

結晶相

α晶 (TGTGʼ:ターシャリーーゴーシューターシャリーーゴーシュの並び) (2/1らせん)

β晶 (T T) (平面ジグザグ)

高分子鎖の形状

ある温度(T )において、高分子はkBTの熱エネルギーを得、 各モノマーはg+, g-, t等の様々な状態をとります。

統計(平均)的にみれば、高分子鎖は球形の糸まり状 (ランダムコイル)
「高分子鎖の大きさ」を評価するには、この統計的な 猫像を評価する必要があります。

高分子の大きさは、末端間ベクトルと平均二乗回転半径で表すことが多いです。

ランダムコイルでは、〈R〉= 0
〈R21/2を高分子鎖の大きさの指標に用います。

重心から各原子への距離の二乗平均
〈RG21/2 「高分子鎖の大きさ」を表す。

内部回転を考慮した高分子鎖の取り扱い

4つのパターンを考える
θ、φ:自由(自由連結鎖)
θ:固定、φ:自由(自由回転鎖)
θ:固定、φ:独立な回転異性体(独立回転鎖)
θ:固定、φ:より現実的な回転異性体(回転異性体モデル)

自由連結鎖

各結合の相関が全くない理想的な系(理想鎖) (θとφが自由な値)
各ボンドは任意の方向を向く
〈ri •rj 〉= 0 (i ≠ j)

〈R21/2 ~ n1/2b(理想鎖)

自由連結鎖における〈R2〉、〈RG2〉の関係

\left \langle R_{G}^{2} \right \rangle =\left \langle R^{2} \right \rangle /6

自由連結鎖においては隣接する原子の位置はランダムなために、末端間ベクトル位置は、以下のGauss関数で与えられます。

P(R)=\left ( \frac{3}{2 \pi n b^{2}} \right ) \exp \left ( \frac{-2R^{2}}{2nb^{2}} \right )

自由回転鎖

θは固定、φが自由な値なとき、

\\ \left \langle r_{i} \cdot r_{i+1} \right \rangle = b^{2} \cdot \cos \theta \\ \left \langle r_{i} \cdot r_{i+2} \right \rangle = b^{2} \cdot \cos^{2} \theta \\ \vdots \\ \left \langle r_{i} \cdot r_{j} \right \rangle = b^{2} \cdot \cos^{j-i} \theta

\\ \left \langle R^{2} \right \rangle =\left \langle \left ( r_{1}+r_{2}+\cdots +r_{n} \right )^{2} \right \rangle \\ = \sum_{i=1}^{n}r_{i}^{2}+\sum_{i\neq j}^{n}\left \langle r_{i} \cdot r_{j} \right \rangle \\ =nb^{2}\frac{1+\cos \theta}{1-\cos \theta}

独立回転鎖

θは固定、φは回転異性体 (g+, g-, t)を考慮

\\ \left \langle R^{2} \right \rangle =\left \langle \left ( r_{1}+r_{2}+\cdots +r_{n} \right )^{2} \right \rangle \\ = \sum_{i=1}^{n}r_{i}^{2}+\sum_{i\neq j}^{n}\left \langle r_{i} \cdot r_{j} \right \rangle \\ =nb^{2}\frac{1+\cos \theta}{1-\cos \theta} \cdot \frac{1+\left \langle \cos \phi \right \rangle}{1-\left \langle \cos \phi \right \rangle}

以上の式は岡の式と呼ばれます。

<cosφ> は回転異性体(g+, g-, t)を独立に考慮したcosφ の平均値です。

特性比

<R2>は、総じてnb2に比例している。

\left \langle R^{2} \right \rangle =C_{\infty}nb^{2}

ここでCを特性比(>1)となります。
高分子鎖の自由連結鎖からのズレを表す指標 (例外多数)

Kuhnの統計セグメント

(これまでに扱ってきた様々なモデルでは) 高分子鎖に沿った近接の分子間の相互作用のみ

高分子鎖に沿って十分に離れた分子同士 には相関(影響)がない

相関が及ぶ範囲の結合分子を1つの集合(セグメント)とする

セグメント同士に相関なし

セグメントからなる高分子は理想鎖

  • セグメントの結合数:ns
  • セグメントの数:ns+1
  • セグメント長:bs

\left \langle R^{2} \right \rangle =n_{s} b_{s}^{2}(理想鎖)

みみず鎖モデル

半屈曲性高分子の取り扱い
みみず鎖(wormlike chain)モデル(Kratky-Porod model)
自由連結鎖を用いて、θ→0、b→0の極限を考えます。
微視的なレベルで剛直とみなせる長さ:持続長(q)
(bs = 2q:DNAではq=50nm, bs=100nm)

鎖に沿った全長をL(経路長)とすると、

\\ \left \langle R^{2} \right \rangle =2Lq-2q^{2}\left ( 1-e^{\frac{-L}{q}} \right ) \\ \left \langle R_{g}^{2} \right \rangle =\frac{1}{3}Lq-q^{2}+\frac{2q^{3}}{L}\left [ 1-\frac{q}{L}\left ( 1-e^{\frac{-L}{q}} \right ) \right ]

屈曲性高分子 剛直性高分子
q→0 q→∞
〜nb2 ~n2b2
~\frac{nb^{2}}{6} ~\frac{n^{2}b^{2}}{2}

排除体積効果

これまでは、隣接する原子間の結合角、内部回転角等 (短距離の相互作用)を考えてきました。
しかし、分子鎖がある程度長くなると、 分子内において、分子の重なりが起こります (長距離の相互作用)。

分子間の斥力的な立体反発と分子間に働く引力的な相互作用の 効果を排除体積効果(excluded volume effect)と呼びます。

溶融状態(高分子100%の液相)や濃厚系(高分子濃度の高い溶液)では分子自身から生じる排除体積効果と、周囲の分子から生じる 排除体積効果は逆向きに働く。 結果として、全ての排除体積効果は打ち消し合い、v = 0となります。

その結果、高分子鎖は理想的なランダムコイルとなります。

 

 

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